やる夫まとめくす短編　カドックとアナスタシア　その６

547 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 22:06:06 ID:uvdzYNx5: 　　　　　　　　　　　　　　　 f´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 |　　カドック、私はあなたに恋をしています。
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550 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 22:15:36 ID:uvdzYNx5: 　..　.:.:.:.　　... ...:.:.:.:.:. .:.:.:.:.:.... ....　..　... ..　　.... .. ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:...　......　　. .... . .... .. .:.:.:.:. ....　r ⌒ヽ .:.:.. .. .
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【アナスタシア】　　　一年前、母国に帰る飛行機の中で私は自分の気持ちに、あなたが好きだって気づいたの。

　　　　　　　　　　そして会えない日々の中でその気持ちはどんどん膨れ上がっていった。

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┃　　今日この時まで口にできなかった感情を言葉にして彼にぶつけられる幸せを噛み締めながら
┃
┃　　春の陽気を感じさせる草原で私は自らが抱いているカドックへの思いを口にする。
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552 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 22:25:40 ID:uvdzYNx5: 　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , .. --―＝―‐-
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　　　　　　　　　　　　　　`' 代h,､､,,.､､rｾ〔ニニニﾆﾆﾆﾆﾆﾆァ　　　　,ふ:ｘ
　　　　　　　　　　　　　　　　ﾏニニニﾆ「ﾆニニニニニニﾆ/　　　　,ｨ(ニﾆイh、
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【アナスタシア】　　　あなたが好き。少し弱気な所も、捻くれている所も、優しい所も

　　　　　　　　　　良い所も悪い所も全部含めてあなたを愛しています。

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┃　　ああ、自分の素直な気持ちを言葉にできるのはなんて心地良いのだろう。
┃
┃　　私の告白によっぽど驚いたのか、カドックはポカーンと口を開けて呆然とした表情のまま固まっていた。
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553 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 22:36:04 ID:uvdzYNx5: 　　　　　　　　　　{｀ヽ　　　　　　＿＿　_
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【アナスタシア】　　　ふふふ、言っちゃった。言ってしまったわ。

　　　　　　　　　　こんな恥ずかしいセリフを言っているのに、ちゃんと伝えられるのがとっても嬉しい！

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┃　　一度タガが外れてしまったせいなのでしょうか。後で思い返したら顔から火が出るような事を口走ってしまう。
┃
┃　　でも今この瞬間、この一夜の奇跡が私にカドックへの愛を口にする機会をくれたと思うとどうしても止まらない。
┃
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555 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 22:42:01 ID:uvdzYNx5: 　　　　　　　　　　 |'　| ＼}　八　　　　　 //// :- ' : 　|　 |
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┃　　だから―ーーもうこれで十分。
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┃　　これは【夢】の出来事であり、都合のいい幻だと分かっている。
┃
┃　　目覚めればすべてが消える水泡。それでも自分の思いを言葉にできただけで、もう満足――――
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559 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 22:50:20 ID:uvdzYNx5: 　　　　　　　　　　　　､丶｀..,,_　｀`丶、＞'"~｀`丶､.,,__,,
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"''i　.,,j　)h､.,,_,,､‐゛　　／　､‐゛ ,′　　　　　　　　　 ;
　j　 7　」＞, ヘ.,,__,,.､丶`　　i{　　　　　　　　 i　　　　　,′　　／
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γム　　　　ﾟ,　　　　 γvﾉ　　　　 `'～、　 ; .}ﾉi　i　〉,　　ア
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. }::.::.:寸､.,,_　　 '/ﾉi　八　　　　　　 _,,ノ! / ﾚ　〈ノｉi .! 「⌒:i:i:i:i:))〕､､、
ⅰ:.::.::.::.::.::.::｀``｀.:j}乂(_,,.　　　　　　　八　　γ!]{]从ﾙ寸:i:i:i:i:ｱﾆ!.:::. ﾟ,
ⅰ::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.,ﾞ`～､.、　　　　　 .u 　　 /　　j　　　 `'芍/ﾆ∥;;;;;i.:',
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【カドック】　　　――――ッ！ああ、クソッ！！

　　　　　　　　　 .本当に都合のいい【夢】で逆に頭にくるよ！！

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　　　　　　 |　ｌ‐-　_　　　　　 i|　 /,　 .}|　　　乂(___))
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【アナスタシア】　　　カドッ、ク………？

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┃　　もう悔いは無い。そう思った矢先にカドックは急にイライラしているように頭を掻き毟る。
┃
┃　　そういう彼の仕草は何度も見てはいたけど、なんだか少し様子が違うように思って―――
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561 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 23:00:22 ID:uvdzYNx5: 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_＿＿＿__
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【カドック】　　　――――でも、ここでだんまりを決め込む方がずっとタチが悪いよな。

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┃　　カドックの手が再び私の頬に添えられる。私よりも大きくてゴツゴツした手。
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┃　　だけど偽物恋人を演じていたから、その手がとても優しくて、温かい事を私は知っている。
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562 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 23:09:12 ID:uvdzYNx5: 　..　.:.:.:.　　... ...:.:.:.:.:. .:.:.:.:.:.... ....　..　... ..　　.... .. ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:...　......　　. .... . .... .. .:.:.:.:. ....　r ⌒ヽ .:.:.. .. .
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【カドック】　　　僕も君を愛している。

　　　　　　　　　　きっと君よりも早く君に恋をして、君を愛していた。

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┃　　いつも浮かべている弱々しい顔ではなく、
┃
┃　　少し険しい表情で、だけどとても真剣な表情でカドックは私を見つめてきた。
┃
┃　　そして思いも寄らない言葉を口にする。
┗
564 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 23:20:09 ID:uvdzYNx5: 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_＿＿＿__
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【アナスタシア】　　　～～～～～～ッ！　そん、な……

　　　　　　　　　　今、そんな事を言うなんてズルいわ………！！

┏
┃　　　私の告白に対するカドックの答えが知りたかった。だけど聞くのが怖くて
┃
┃　　　そんな事はありえないと諦めて自分の思いだけを伝えられればそれでいいと思っていたのに
┃
┃　　　それなのに、カドックが口にしたのは私が一番欲しかった言葉だった。
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566 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 23:29:01 ID:uvdzYNx5: 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 o
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【アナスタシア】　　　愛しているって言えれば十分だったのに、この気持ちを口にできれば満足したのに………

　　　　　　　　　　それなのに、あなたに愛しているなんて言われたら私、私……ッ！

┏
┃　　　涙が一筋こぼれ落ちる。悲しいわけではない、だけど嬉しいから流れているわけでもない。
┃
┃　　　私は胸の中で渦巻くこの感情を上手く言葉にできなかった。
┗
568 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 23:37:03 ID:uvdzYNx5: 　　　　　　　､――― ､／. ／／　　　　　　　　｀㍉､／.　　　　　　＼
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【アナスタシア】　　　ずっとあなたと一緒にいたいって思ってしまう！

　　　　　　　　　　　　　今度は偽物じゃなくて、本当の恋人としてあなたの隣を歩きたいって願ってしまうわ！！

┏
┃　　カドックの言葉のせいで心の中で蓋していた願いが溢れ出てきてしまう。
┃
┃　　あの日からずっと夢見ていた幻想。けして叶わないと思っていたから考えようともしなかった未来。
┃
┃　　私の自分勝手なワガママが涙と共に飛び出てしまった。
┗
570 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 23:46:52 ID:uvdzYNx5: 　　　　　　　　　　　　　､丶`｀`Y´　　｀`丶､.,,__
　　　　　　　　　 .,,__,,.､- ゛　　　　 `､　　　　　＜.,,＿,,.
　　　　　　　　ー=彡　　　､ヽ`　 ⅰ `　　　　　　　　 ,′
　　　　　　　　　ノ　　 ,　´　　　　 !　　`､　　　　　《,
　　　　　　ｰ=彡　　 /　　　　　　 ,′　　ﾟ,　　　　　　(
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　　　　　　ﾉ　　　|　　　__,,.、`　　 /　　　　　　　 ≪,_彡'　　　　　　　　 |　うっ、うう………！
　　　.,,___彡'　　ｉ|　　　 ⌒7　　 / ,　 .i{　　 , } ｢⌒ｉ「ミメ、_　　　　　ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿乂_
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　　　　　　　 )　,,.　　　　/人　 ,ﾞ　　　　　　　　 {　∨:i:i:i:i:i:ｉ:ｉ:/, ﾑ　　　　　　　　　　　　　 |　うう………！
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　　　　　　　　从|i: ⅱム　 `ｈ､　　　　　 ,心　　　　´'＜′-j}ニ)h､
　　　　　　　　　　　八圦公.、L,,､　　　__　　,ふ　　　　 ,ｨi{=ﾆアニニﾆ) ､、､、
　　　　　　　　　＼ミﾒ、)ｈ､ｰ≠'" 　.‰;;:;:.:.:i . . ..,ｨi{ﾆﾆアニニﾆア: : : :.寸＼
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┏
┃　　カドックの胸に顔をうずめ私はまた子供のように泣いてしまった。
┃
┃　　彼が来てくれた時も、そして今もみっともない姿を見せてしまっていると分かっていても涙が止まらない。
┃
┃　　ああ、私はいつからこんなに泣き虫になってしまったのでしょうか？
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571 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/06(月) 23:52:10 ID:uvdzYNx5: ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; /.　　　　　　　　....:::.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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┃　　いつの間にか辺りの景色は夕焼け色に染まって、抱き合う私達の影が伸びていた。
┃
┃　　そしてあの陽が沈めば私達は目覚めて現実へと戻ってしまうと直感してしまう。
┃
┃　　いくらこの時間が続いてほしいと願っても奇跡の時間は有限なのでした。
┗
573 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/07(火) 00:02:05 ID:D/jfPanE: 　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　 ∥　　　込_　l　　 | /// 乂／,ｲ
　　　　　　　　　　　 /.　　　　　 ∥　　　,′'｡ . ｌ.　　 |　。〈イイ
　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　 ∥　　ハ　 '，.l.　　 |　,ィ´　　|
　　　　　　　　　　 /　　　　　　 / 　　 /〈〉ヽ　'｡.l.　　|´: :|　　 |
　　　　　　　　　 ,　　　　　 / 　　 / 　　ヽ ',.l 　 |: : :|　　 |
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　　　／／/　　　　　　　　/!　　　 /: ﾍ　〈〉　　〈〉　l |　|iﾑ ∨　／　　`ニニ⊃
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┃　　不思議な黒髪の女性に頂いた白い【本】は後一冊だけ、この奇跡の時間は後一回だけ。
┃
┃　　その残り一回の奇跡で何ができるのか。どうしたいのかを必死に考える。
┃
┃　　今にも途切れてしまいそうなこの脆い繋がりを保てるような方法を――――
┗
574 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/07(火) 00:05:53 ID:D/jfPanE: 　　　　　　　　　　　　　　　　　　 f´￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　　カドック………
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿乂_

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┃
┃
┃　　　　　　　そして―――――
┃
┃
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576 ：黒マント ◆8alnqWF4MNwa ： 2018/08/07(火) 00:13:54 ID:D/jfPanE: 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /}＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿∠ノ-=======- ､　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{イ　厂￣　　　　　∨　｀ヽ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / :レ,' 　　 ./　　　∨　∨＼:∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　/　　　 .:　　　　 :.　　∨　∨}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.:　　:/　　/　..:　　　　 {:　　 :. 　 ∨_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　 .:　　.:　　　　　 i　　 ..:　　　　　〈∨}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　:|　　|　　|　　　{:.　　.:　　ﾊ　　 }乂〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　:|　　|￣::|　　　{:.　 .ﾊ　,' 人　　:レ'
　　　　　　　　　　　　　　　　　人　 :.レｬﾃ==ｖ　　 :.　∧／ﾚ￣i　 ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　＼　c乂シ乂＿八ｬﾃ笊㍉ .:}　　∧
　　　　　　　　　　　　　　　　/　.:　　:{＼〉/。//　　　　ゞシっ/:∧　 :∧
　　　　　　　　　　　　　　 /　.: ∧　{:∧　　゜　　 ′　/// i / ∧　､　:∧
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　　　　　　　　　　　　　　/　.:　　／　　∨.}＼　　　　／　／,　｀:∨　｀ヽ＼
　　　　　　　　　　　　／　.:　　./　　〈〉　∨〈Ｙ＞‐＜'　／//　　 :∨　 ∧＼＼
　　　　　　　　　　　／　 .:　　/　　　　　　∨ー〔〕‐/／ ://　　　 :∨　 ∧　＼ｖ
　　　　　　　　／　／|　　八∨　〈〉　　＼　 ,／　 ://　　〈〉　　 :∨　:∧＼ }
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...:/‐_‐.／／‐_‐_‐|＼ Ⅵ |　|人/　　／iii)iiiii｀)　　　　::::　　 {iiiiﾉiiiii∧ 〈〉 {-_-_-_-_｀ヽ
./‐_‐_‐_‐_‐_‐_‐_‐| 〉　¨ﾚ‐ '／〈〉／iiiiiiiiﾚゝ､{　　 , '　　＼　ト'iiiiiiiiiii∧　 :{‐_‐_‐_‐_‐_‐
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【アナスタシア】　　　思い出をください。一度だけでいいからあなたと愛し合ったという思い出を。

　　　　　　　　　　　　　次の【夢】で待っているから………。

┏
┃　　私は彼と心だけではなく、体の繋がりも求めた。
┃
┃　　例えこれが幻でも、カドックと結ばれることができた思い出が欲しかった。
┃
┃　　そして、その思いを伝える事ができた瞬間、目の前に居たカドックの姿は消えてしまった。
┗

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【つ　づ　く】

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